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ばちばちばちっと派手な音を立てて空から投げつけられていた
季節外れの雹(ヒョウ)は
亜紀がバスを降りる頃には止んでいた。
ひんやりと湿った夜の空気に緑の匂いが漂っている。
何度も何度も深呼吸する。
そのうちに自分の吐き出す息からも緑の匂いがしてくるような
そんな気がして亜紀はしばらく深呼吸を繰り返した。
濡れそぼった街路樹の生い茂った緑の葉は
街灯の明かりを反射して輝いている。
ああそうか。
あの雹(ヒョウ)だ。
あんなに激しく叩かれたから
あの葉っぱたちは緑の匂いを放ったんだ。
いつも
ただそこに立っているだけなのに……。
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