57人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ
その瞬間から
その“何か”はいつも部屋の片隅にいた。
それは透明な空気なのに
そこだけ何かの比率が違っているようで
明らかに周りとは異質のものだった。
窓を開けて風を入れて
扇風機を回して部屋全部の空気をぐるぐるとかき混ぜようとも
決して混ざることなく
そこにわだかまっていた。
はじめはほんの子猫ほどの大きさだった。
いつもそこにいて
だからといって何かの障りがあるわけでもないから
亜紀は気にしないことに決めて
無視し続けた。
無視すればするほど
それが少しずつ少しずつ大きくなってきて
今は自分と同じくらいの大きさになっていた。
最初のコメントを投稿しよう!