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だけどもう
どんなに鼻を引くつかせても
どこにも緑の匂いは残っていなかった。
どこかでミオンと小さく
けれど確かな声が聞こえた。
そう。
ここに留まる必要なんてない。
どこにでもいけるじゃないの
私は。
亜紀は
微笑みながら声のする方向へ足を向ける。
ミオン。
すぐ近くの街路樹のあたりから
その小さく愛らしい声は亜紀を誘った。
空には細い子猫の爪のような三日月が輝き
亜紀のゆく道を微かに照らし出していた。
~完~
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