3:Accomplice

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母が海を見ながら言ったその言葉を、私はきっと、ずっと忘れられない。 すぐに答えない私をつつくように、奈々枝はまた言った。 「ねぇ愛、本当に?」 「大丈夫だよ。奈々枝」 奈々枝は私のメールを見てすぐに電話してきたんだ。 「だんなと子供は?」 「ハワイ。まだすぐにダメってわけじゃないから。キャンセル料高いし」 「ほんとに?だからってさぁ」 奈々枝の呆れ声にまた苦笑。 それは同感。 でも言わない。 電話の向こうでコーヒーをがぶりと飲んだ気配がした。 「今までも何度も似たようなことあったからね」 「いいの?愛?」 「それに、後見人は新倉さんで法定相続人は私だから」 奈々枝はきっと気付いてる。 私が言外に伝えようとしていることに。 「……そっか。まぁ泣きたくなったらいつでも付き合って上げるから」 「ありがとう奈々枝」 「愛?」 「ん?」 「初めてだね……。自分の気持ちを最優先にするのって」
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