1:DEEP SEA

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…*ユリSide*…  『ユリ、今日は10時15分』  って、タイトルで本文のないメールを送って来たのは、ジン。  なのにぃ!っんもう!    自転車をこぐ。ペダルをぐっぐっと力一杯に踏みこむ。  まずい。まずいってば。絶対に遅刻だもん。  駅前から海の方まで続く道を自転車で走っていく。大きな交差点を通り過ぎる。  居並ぶ団地と、小学校、中学校の間の道をまたまっすぐに走る。  ジンと約束した場所へ。  右手側の古い団地群にちらりと目をやる。別世界みたい。  知らずに減速している。  この築47年にもなる団地たちは、本当に建て替えになって、ここ、今とは違う風景になるのかなぁ。  その昔、在日米海軍辻堂演習場だったらしい広大なエリアに すごくたくさんの団地が整然と建っている。  まるで、気まじめな巨人達がきっちりすっきりと、永遠に乱れることのない列をなしているみたい。  子供の頃、迷子になったっけ。ジンのうちに行こうとして……。  あの時、どこ見ても同じ形、同じ色の団地が並んでて、その団地は空に届くくらいに高く見えて、  自分がどこにいるのか、わからなくなって、  永久に出られない迷路に迷い込んだような気がして、怖かった。  小さくなる液体を飲んだアリスみたいな?  あの団地からにょきっと腕が生えてきて、ひょいとつまみ上げられて、ぽいと団地の屋上に上げられちゃったら?  もう絶対にジンに会えないし  きっと誰にも気づかれないでそこで死んでしまうって  そうやって団地お化けにさらわれた子供達の死体が、あの団地の屋上にたくさん転がってるって、  そんな……変な想像したんだ。  すっごく怖くなって、走り回った。  見つけた公園の、トンネルみたいな遊具の中に隠れた。  それで、心配したジンが自転車で探し回って、見つけてくれた時は、ほんと嬉しかった。    泣いたんだっけ?あの時
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