3:Accomplice

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こんな時に……。 でも、時間は待ってくれない。 紛らせるように窓際へ。 眼下に広がるのは、海。 ついさっき、ここに向かう時に車の窓から見ていた夕暮れ前の海は、鈍色で雲間から差す陽光をちらちらと弾き返していた。 海原の、ずっと向こうにはきっと雲がなかったんだ。 無邪気に、きらきらと暖かそうな陽光を波間に乗せ、揺れていた。 今、私が窓から見下ろす海は、先ほどとは違う。 海面近くに降りて来た太陽は、ちょうどいい具合に切れた雲の間から顔をのぞかせ、暗い水面にオレンジ色に輝く光の道を描いている。 海は気ままに波を生み、太陽が作りだした光の道を自在に揺らしくねらせる。 影人形のようなサーファーが波に乗り、光の道を斜めに切り裂いて滑っていく。 海岸では犬を散歩させている人がいた。 手前にある公園ではブランコに乗せた子供の背中を押して漕いでやっている母親、ベンチに腰掛ける老夫婦、滑り台の上やその周りで走り回る、鬼ごっこでもしているような男の子達がいた。 ここでこれから何が起きようとも、誰ひとり気付きもしないしきっと興味も関心もない。 それは自分達の生活を、脅かしたりしないものだから。 皆それぞれが、自分に精一杯なんだ。 自分が生きる、自分の命に……。 母はあの日、海を見つめながら言った。 「死ぬのは難儀なことだねぇ。晴信はよくぞ見事に死んだものだ」 「そうだね。すごろくでさっさと上がっちゃったみたい」
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