3:Accomplice

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上手く諦めて手放せたんだろうか。 すべてを。 ……。 目頭が熱い。 じわりと視界を歪ませた涙を零すまいとして私は、微笑む。 窓ガラスには笑う私の透明な姿が映り、その向こうでやっぱり見知らぬ人達が、それぞれの営みに夢中になっていた。 兄が亡くなったことは、手術を控えていた母には、しばらく伏せることにした。 ショックを受けて体力が落ちるかもしれないし、手術なんて受けないと言い出すかも知れないから。 新倉さんにそう告げると、彼は痛みを堪えたように悲しそうに微笑んだ。 「そうですね。お母様のご性格では、そのようにして差し上げるのが良いでしょうね」 控えめな声でそう言ってから「古瀬さんは大丈夫ですか?」と私の目を見た。 案ずるように首を傾げて、私の言葉を待ってくれた。 「はい」と私が答えたら、彼は小さく溜息をつき「……と、しか言いようがないですよね。お手伝いできることは致しますので、おっしゃって下さいね」と言った。 後日、母の病院に面会に行った。 「看護師さんに時々、家に電話してもらってるけど……晴信、まだ連絡とれないの?」 母に聞かれた。 ちょうど、その時、病室のドアがノックされ新倉さんが顔を出した。 何事もなかったように、いつものように微笑んで互いに挨拶をした。 母は、新倉さんが来てくれて嬉しそうだった。 「ねー新倉さん、まだ晴信から連絡ない?」 「ええ。そうですね。留守電に残しているんですが」 淀みなく、笑って新倉さんが答える。 「きっとお母さんが入院してる間、一人でのびのび羽を伸ばそうって決めてるんじゃない?」
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