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「たまにはいいか。あの子もいい歳だし」
「そうそう。今のうちに彼女でも見つけてくれれば、いいし」
「晴信の彼女ねぇ……できればいいけど。新倉さん、誰かいないかね?」
「うーん……私の周りにはご紹介できそうな女性はいませんねぇ。残念ながら。皆さん、かなり年上の既婚者ばかりですし。いれば、まず私が何とかしたいものです」
「そりゃそうよねぇ。残念だねぇ」
「とか言って、彼女できたらヤキモチ焼くんじゃないの?」
「妬かないよ。晴信は一緒に住める人じゃないとって言うけど、私はあの家で小さくなって暮らすのは嫌だから、そうなったら出ていきなさいって言ってるくらいなんだから」
「出てけって言われたら、彼女作れないじゃん」
笑って言った。
「なんで?いいじゃない。私は一人で大丈夫なんだから。新倉さんがいるし」
「古瀬さんもいらっしゃいますしね」
フォローするように新倉さんは言った。
「あーこの子は、子育てと古瀬君のお世話と、これから古瀬君の親、見ないといけないからね。私の世話までできないわよ。
だから新倉さんっていう任意後見人をつけたんだし。
だいたい、この子ったら、高校も大学も自分でさっさと決めちゃうし、就職も転職も勝手にしちゃうし、結婚するときだって荷物まとめてぴゅーんって出て行っちゃって。
お金も口も出させてくれなかったし。
ほんと、愛はあっという間に勝手にするする大人になって、上手いこと育って楽だったわ。
誰に似たんだろうね」
労わるような、どことなく苦笑いしているような目で新倉さんは私を見ていた。
「古瀬さんは、奥村さんによく似ていらっしゃいますよ?とてもしっかりされていますし」
「そうかねぇ……」
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