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ペットボトルに直接口をつけて水を飲む時の開いた唇、上下する喉仏、初めて見る新倉さんの姿に知らぬ間に視線が縫い付けられていた。
「どうかしましたか?」と聞かれて、私の視線はぱちっとハサミで断ち切られたように離れた。
新倉さんの目とぶつかる私の視線。
「あ、あの……何でも」
「そんなに見られたら恥ずかしいですよ?」
「あ、ご……ごめんなさい」
「後でお返ししますから」
「え?」
「ともかく、どうぞ?」
新倉さんは悪戯な笑みを浮かべ、優雅に手のひらでバスルームを差した。
「……あの……はい」
「ごゆっくり」
戸惑った気持ちのままバスルームへ。
広い。
右手側のドアのつるつるした金色のドアノブを捻る。
開けると綺麗なピンク色のトイレ。
穏やかなブラウン系の壁紙。
それによく合う濃い茶色の高級そうなタオルが磨かれた金色のタオル掛けに掛かっている。
作りつけの棚に置かれた高級ブランドの香水瓶から控えめながらも甘いムスク系の香りが立っている。
左側のドアは曇りガラスに曇りのない金色の取っ手。
正面には棚にはふわふわした白いタオルとバスローブがきちんと畳んで置いてある。
その隣に観音開きの扉。
中から小さなモーター音がする。
開けてみた。
小さな除湿機が作動している。
金色のバーに木製のハンガーがあって、新倉さんの服が掛かっていた。
その下には蓋つきのラタンカゴがある。
蓋を開けるとなかにさらりとしたオレンジ色のシルクが張ってある。
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