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いま……
わ、視界が端から黒くなる…
……せ、さん?
遠くの方で声が聞こえてる。
返事をしたいのに、石になったみたいに動けない。
るせさん?
ああ、ほら。
また……。
頭が冷たい。
ん?他にも冷たいところがある?
どこ?
頭よりも下の……どこ?
「古瀬さん、大丈夫ですか?」
重たいまぶたを少しだけ開けた。
心配そうな顔の新倉さんがいる。
私、どうしたのかな?
「のぼせたようですね。睡眠不足のせいですね、きっと」
重いまぶたは自然と降りてきて、私の視界を閉ざす。
おでこが軽くなった。
私の額から何かを取り、どこかに行った新倉さんは、すぐに戻ってくると冷たいものをまたおでこに乗せてくれた。
「大丈夫ですよ?少し休めば」
新倉さんの手が私の首筋に置かれた。
どきっとする。
「……ん?」の声の後、少し力が加えられ押さえられた。
「……うん。心拍も問題ないから」
その手は無表情のまますっと離れた。
だんだんとはっきりしてきた。
状況が理解できる。
お風呂でのぼせた私を新倉さんが介抱してくれたんだ。
お風呂上がりをどうするかなんて、あれこれ考えていたのに。
ぜんぶ無駄で、全部すっ飛ばして。
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