3:Accomplice

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きっと、ぐったりした素っ裸の私を抱えて、ベッドに運んでくれたんだ。 状況的に、それ以外は考えられない。 体の上に掛けられたバスタオル。 冷たいのは脇の下、それと……。 「失礼します」の一言を連れて新倉さんの手が、さっさとバスタオルの下に入ってきた。 ドキッとしたのもつかの間、艶っぽさのかけらもなく、事務的な感じ…… 「すみません。そけい部と脇の下も冷やしていたので」 ……だけど、恥ずかしい。 なんでこんなことに……。 「……あの……ごめんなさい」 目を開けることができない。 顔を見るのが怖い。 「いいです。気にしないでください」 「でも」 どんな慰めを貰っても、間抜けすぎる。 そう思っていたら、ふふっと温かな、鼻にかかった笑い声が聞こえた。 「どうせあとで見るんですから」 「え?」 思わず目を開ける。 なんだか額を弾かれたようなちょっとした衝撃だった。 ぱちっと視線がぶつかる。 新倉さんは悪戯な笑みを浮かべて小首を傾げた。 ぎゅっと目を閉じる。 くすりと笑った音を聞いた。 「さて、水分補給が必要ですね」 ベッドを小さく揺らして新倉さんは立ち上がったらしい。 冷蔵庫を開ける音がする。 「少しだけ起き上がれますか?」 目を開ける。 すぐ閉じた。 まぶたに新倉さんのシルエットが浮かんでいる。 「眩しいですか?」 「……眩しいです」 すっと照明が、まぶたの裏側でも落ちたのがわかった。 手をついて少し体を起こす。 新倉さんが私の頭を支え、ペットボトルを差し出して微笑む。 穏やかに。 「どうぞ?飲みかけですけど」 「ありがとうございます」 その落ち着いた行動に、ほっとする。
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