3:Accomplice

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受け取って一口、含む。 甘い。 ただの、いや水道水じゃなくてミネラルウォーターだけど、それでも単なる水なのに、しかも飲みかけの。 でもそれはとても甘くて、細胞の隙間からなんなく私に染み込んでいった。 「ビールとかお酒は、のぼせた後では飲ませてあげられませんよ?」 ちょっとからかうような音を含んでいる。 でも小さな子供を諭すような言葉に聞こえて、くすぐったい。 「……はい」 もう一口。 新倉さんは上手に私に水を飲ませ、また体を横たえさせた。 「大丈夫ですよ。もう少し休んで下さい」 上掛けを顎のところまで引き上げると、そっと肩口を押さえてくれる。 目を閉じた。 蜂蜜のようにとろりとした液体がまぶたの裏をゆっくりと滑り落ちて行くみたい。 視界が少しずつ細長くなっていく。 新倉さんの優しい瞳がすぐそこにある。 こんな無防備な状態なのに。 どうして、こんなに安心してるの? とろとろと甘くとろける眠りの底に、私はゆったりと沈みこんでいった。 どのくらい時間が経ったのか、わからない。 睡眠と覚醒の狭間で、ふと気付いた。 自分とは別のリズムを刻む寝息がすぐそこで聞こえる。 薄目を開けた。 新倉さんが隣で眠っていた。 安心しきった子供のような寝顔に不思議な気持ちになる。 もしも、今……。 呼応するように、はっとその目が開いた。 「ああ……すみません。寝てしまいました。夕べ、深夜過ぎまでかかったものですから、つい」 ちょっと照れくさそうに笑う。 「やれるなって、思っちゃいました」 「ん?」
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