3:Accomplice

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「今ならナイフで、グサって」 「ああ。その殺気で目が覚めたんですかね」 ふふふ。 目を見交わす。 微笑む。 胸の底がきゅっと痛んだ。 新倉さんは、するりと体をずらして起き上がりヘッドボードに背中を預けると「気持ち良かった」と言った。 私の顔の横に新倉さんの手がある。 大きな手。 きっと、どんな小さな骨もみんながきちんと役割をわきまえて、標本通りに並んでいるに違いない。 「睡眠は時間じゃなくて、質だって言う意味がよくわかるような眠りでした」 温かい声だった。 なんだか無性に自分のことを話したくなった。 でも、そんなの迷惑だろう。 無関係な話だもの。 あくびをかみ殺して上手いこと相槌を打つ努力を強いることになる。 いつの間にか重ねていた私の手を、新倉さんはそっと握ってくれた。 私は一つ深呼吸をした。 やっぱり、話したい。 聞いて欲しい。 どうしてなんだろう。 「私、子供の頃、白いセキセイインコを飼ってたんです。赤い目で黄色のくちばしで、足は綺麗な肌色でした」 「そうですか」それは、その話の続きを促すような優しく染み込むような声だった。 「とても懐いてくれていて、手の中に握るように持っても全然嫌がらないんです。 目の下や首を指で掻いてあげると、もこもこに膨れて気持ちよさそうに目を閉じて寝ちゃうんです。 私につかまった足がぽわぁっと温かくなって、本当に安心しきったように」 「ええ」 「子供心に思ったんです。 このままぎゅうって手に力を入れたら、きっとこの子は死んでしまうのに、どうして私の手の中でこんなに安心していられるんだろうって……」
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