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こんにゃく、もつ、生姜、ゴボウ、ニンニク、人参、大根。味噌味がてっちゃんの好み。
やだ。
スピード落ちてた。
ペダルを踏み込む。
まずい。まずいって。ほんと。遅刻だもん。
でも、ジンが絶対に怒ったりしないのも、わかってるんだけどね。
だとしても、努力だけは見せなくちゃ。うん。
風が頬を撫でていく。
待ち合せの場所がどんどん近付いてくる。
ちらっと左の腕時計をみる。
きらっと薬指のダイヤが輝いてひょんっと心が動く。
指輪をきらきらさせてみる。
眩しさが嬉しい。
もうすぐ結婚式。それから新婚旅行。
しばらくジンに会えなくなるのは、寂しいけど。
でも、あたし達が変わるわけじゃない。
あたし達は今までと、何も変わらない。
ハッピーな歌が流れケータイが着信を伝える。慌てて自転車を止める。
まずい!遅いって怒られるかな?
いや。ないよね?
今さらあたしの遅刻癖、責めたりしないよね?ね?
ケータイを開くと、着信<小木哲司>だった。
……ん?何だろ?
「あ、てっちゃん?」
『ユリ、今日、遅くなるから。ごめん。夕飯いらない』
「えーせっかくてっちゃんの好きなもつ煮作ったのにぃ」
『わりぃ。接待でさ』
ぷち、と電話が切れた。瞬間、ひゃあだかきゃあだか、女の声がしたような気がした。
いや。それはもうスルーだ。
だいたいてっちゃんは誰にでも、基本、優しい。だからモテるんだ。だけど色恋じゃない。人間としてモテてるんだ。
共に生まれ育った古い付き合いや仕事で出会った新しい付き合いや、ともかく性別年齢問わずに、いろいろとあるんだ。
仕方ないよね。てっちゃんは浮気しない。たぶん。絶対。
もうすぐ結婚式で新婚旅行で
しばらくてっちゃんは仕事を休むんだし。
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