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「仕事して帰って来て古瀬君のためにご飯作って、掃除や洗濯して、チャラの世話して、でもチャラは威嚇するし言うこと聞いてくれないし……。
それで、私、チャラと話し合ったんです」
「猫と、ですか?」
「はい。チャラを抱きあげて、目を見ながら、そんなんじゃこれから一生付き合う自信が持てないって。
私はチャラから見たら嫌なことばかりしてるから、嫌われちゃうのは仕方ないかもしれないけど、でも、これはチャラに元気になって長生きして欲しいからしてるんだよ?って。
チャラはじっと私の目を見つめ返していました」
「へぇ」
「そしたら次の日から、チャラが変わったんです」
「変わった?」
「はい。どこへでもついて来るし常に私にくっついてるみたいな感じで。すごく甘えん坊で」
「それは良かったですね」
「……ある日、おもちゃのゴムが右手にぐるぐる巻きになって、グローブみたいにパンパンに腫れちゃって。
古瀬君からすぐ帰って来てって電話が来て、私は仕事の途中で家に帰ったんです。
そしたら、チャラはテレビの陰で低い声出してて、古瀬君が近付くとしゃーって威嚇してて。
でも、私が呼んだらすぐに出てきてくれて、ゴムを外すときも痛いだろうに我慢してくれて……。
その時も委ねられている感じがして、絶対に幸せにしてあげようって思ったんです」
「古瀬さんに懐くっていうのは、わかる気がしますね。とても」
「飲み過ぎてお酒臭い息を吐いてても、忙しくてお風呂にも入れなくてぼろぼろの時も、
どんな私でもいつも変わらずに甘えてくれるし、楽しいときだけじゃなく、私が怒っていても泣いていてもそばにいてくれる。
そのままの私を、まるごとそのままで受け入れてくれて……。
私は、見返りを求めない、条件をつけない、無償の愛をチャラから教わったんです。
なのに……」
「……なのに?」
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