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「流産の処置でした。
手術の後、見せてもらったんです。私の子宮から吸い出されたもの、ついこの前まで赤ちゃんになりかけていた命。
先生は「形はわからないよ」って言ったんだけど、見ておきたくて。
ガラス瓶に入ったそれは、本当に形のないもので、水の底にもやもや沈む赤い、藻のようでした」
「……そうですか」
「頭では理解できてたんです。たぶん。
育つことのできない遺伝子の組み合わせだったから、この子の心臓は止まったんだ。
誰のせいでもないって。
だけど、だったらどうして受精したんだろう……って。
受精して細胞分裂して心臓ができて、ぴこぴこと動いて、私は、その動きにとっても喜びを覚えたのに。
結局、こうやって、機械で吸い出されて、捨てられちゃうのに……どうして?って」
「ええ」
「何かの意味を、理由を見つけようとしました」
「見つかりましたか?」
「いいえ。ただ、あったのは無力感だけで」
「そうでしたか」
「頭と心がバラバラでした。
その時期の飲み会で、あり得ないほど飲んで……どうやって帰宅したのかわからなくて、意識をなくして目を覚ましたら、リビングで倒れてました」
「リビングで?お一人だったんですか?」
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