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まだどこにも届かないのに、その手が触れるところは熱を帯び、呼吸を荒くさせる。
耳の下に湿ったキスをされてぴくんと体が跳ねた。
体の真ん中に熱がこもり内側からとろりと溶かし出し溢れさせる。
さっきの無表情な手とはまったく違う質感を肌に刻む、新倉さんの熱い手。
迷わずに遊ばずに、触れる。
「もう?」含み笑いのような声で囁く。
体は意識しない思いをそのまま映し出す。
欲しかった。ずっと、私は彼を。
だから、まだただ触れられただけなのに、溢れてしまう。
零れてしまう。思いも声も……。
無慈悲に戯れる指先に追い立てられていく。
熱がどんどん上がって私はさらに融けだし溢れて零れる。
息が、苦しい。
内側から逃げられない熱に焙られている。
不定期なリズムで漏れる声を、喉元を締めて抑えていると「聞かせて?」と蜂蜜みたいに甘い声でねだられた。
喉の奥が解かれて、溢れてまとわりつく声に溺れていく。
熱い吐息は途切れがち。
彼は私の耳元で囁く。
「本当はずっと欲しかったんです。あなたが」
強くきつく抱き締められ、その腕の中でまた昇り詰める。
「その言葉、欲しかったの」
「言葉だけ?」
「……あなたが」
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