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逃げようとしているのか追いかけているのかわからない。
まだ果てない。彼の唇が触れた。
荒い呼吸と淡く途切れる声に、自分をなくしていく。
こんな声をあげるなんて。
「そんなに、煽らないで」
彼は囁く。
「可愛過ぎて、やめられない」
煽られているのは私。
彼の手で強く拘束されたまま体中を沸騰させて弾ける。
「足りないんだ。もっと」
不思議な感覚だった。
まだ先があるような気がする。
もっと深いところにいけるような気がする。
彼が欲しい。
このままずっとずっと、こうしていたい。
体をのけぞらせて、果てた。
互いの体を抱いて、胸の底にある思いをすくい上げる。
口に含み、噛み締めた。
愛しい。
でもそれだけじゃない、何か別の気持ちがあって奇妙な感じがする。
「……変な感じがします」
新倉さんの肩に顎を乗せるようにして、その耳に呟いた。
「どんなふうに、ですか?」
穏やかに問い返す声に胸が熱くなる。
「互いを助け合った……戦友を抱いてるような……」
ふふふ。
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