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私の耳に唇をつけて笑う新倉さんは、私にまわした腕にぐっと力を込めた。
「消耗の激しい戦いでしたね」
からかうような甘い声。
おでこをつけて見つめる。
軽いキス。
ここから、少しずつ距離を測ろう。
日常の、この部屋のドアの前に立っていた時の距離感へ、戻るために。
「一緒に入りましょう。また倒れたら大変ですからね」
新倉さんはそう言って、バスローブをはおり立ち上がる。
私にバスローブを着せかけ、手を差し出した。
「立てますか?」
その言葉に、頬が熱くなる。
「……大丈夫です」
「何で今、照れるんですか?あんなこと、さんざんしたのに?」
「……気がついたんですけど、新倉さんってSですね」
「そんなことないと思いますよ?古瀬さんには特別、優しくしていますからね」
「ウソ」
「それにも、気付かなかったのですか?」
「え……」
「もっと、イジワルしましょうか?お望みなら」
「……やだ、です」
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