3:Accomplice

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二日間ほど、母は冷凍庫のようなところで保管されたることになったが、きっと文句は言わないだろう。 ハワイからは夫と息子だけが帰って来た。 夫は、両親と弟夫婦からの香典だと言って十万円を差し出した。 どことなく誇らしそうな表情だった。 私はあえてありがたそうに恭しく受け取った。 予測通りだったし、悲しまない人が増える葬儀はごめんだったから、物分かりの良い妻、嫁の仮面をかぶることに決めた。 「ごめんね。忙しい思いさせて」とも言ってみた。 「いいよ。仕方ないから」 彼は言葉を素直に受け取り、その瞬間から本物の部外者になった。 夫は、母の顔を形式的に必要最小限に、見ただけだった。 幼い息子は、冷たいおばあちゃんのおでこを何度も何度も撫でていた。 「つめたいからしんだの?あっためたらいきかえる?」 「生き返らないよ」 「おばあちゃんもハワイにつれてってあげようっておもったのに。おとなになったら、かねもちになって」 「おばあちゃん喜んでるよ」 「ぎゅってするんだ。ハグって」 「ハグ?」 「ちゅーもするんだ。ママもつれてってあげるからね」 「……うん。ありがとう」
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