断るワケ

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翌朝。 いつものように登校し、私は下駄箱へ向かう。 しかし、私の下駄箱の前には彼がいた。 「おはよう、白津 琴羽(シラツ コトハ)ちゃん」 にこり、と笑うその人を見て、私の顔はみるみるうちに青ざめていく。 「さて、昨日のことについて説明してもらおうか」 ニコニコ笑っているが、目が完全に笑ってない。 私は目を泳がせた。 「あ……あのぅ…… 上履きが取れません」 「俺の質問の答えになってないよ。 昨日のことについて、って言ったろ?」 昨日のこと。 あれは、できれば思い出したくない。 心の奥にしまっておきたいのに。 私の前に立ちはだかる、この男。 間違いなく、昨日私が告白した相手。 真弓 尚(マユミ ショウ)。 私の一つ上、つまり高校2年生の先輩で、陸上部のエースである。 「何で、昨日俺は君にフラれちゃったのかな? 普通、立場逆じゃない?」 うっ………… そりゃそうですよね…。 告白しておきながら、真弓先輩の了承を拒否したんだから。 何も答えない私に、真弓先輩も次第に苛立ちを見せる。 「あのさ、白津ちゃん?俺はオッケー出したんだから。 何が不満なんだ? 君の求めていたものは、男女間の付き合いじゃないの? それだったら、白津ちゃんは何で俺に告白してきたわけ?」 「そ……それは……」 ようやく口を開いたものの、そのあとに言葉が続かない。 真弓先輩は、じっと私を見つめてくる。 「それは?」 「…………っ と……とにかく、真弓先輩とはお付き合いできませ――――んっ!!」 半泣き状態で、私は逃げるように教室へ走って行った。 もちろん、上履きなど履いていない。
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