その男、女王様につき

3/3
前へ
/8ページ
次へ
だってそうだろ…? 必死なら必死そうな顔をすれば良いのに、奴の顔には笑みが浮かび、余裕にも見える。 渉「酷いな…嘘じゃありませんよ…手貸してください」 遼「手……?」 渉「ほら…ね?心臓はやいでしょう?」 遼「本当だ……」 手首を捕まれ押し当てられた胸からトクン、トクンと鼓動が感じられる… 確かにかなりはやい………でも… 俺の鼓動もなんか早くなってない…? つられているのか、まるで追い掛けるかのように自分の心臓もはやくなる…… 有り得ない…… 遼「確かに早い…でも俺には関係ない」 何だか調子狂う奴からはさっさと逃げるに限る…… もう会うこともなければ、早々話すこともないだろう。 これ以上奴に関わる気はなかった…… そう…あいつの横を通りすぎたとき、俯く寂しげな顔を見るまでは。 遼「振り向かせてみれば…?俺を。あんたに果して出来るかな…?」 気がつけば口に笑みを浮かべこんな台詞を言っていた。 後悔よりも疑問。 何故あんな事を言ったのか。 とんでもない事を言ってしまったのだと、俺を見て笑うあいつを見てそう感じた。 渉「俺…しつこいですから」 遼「そう……」 渉「振り向かせてみせますから、今みたいに」 遼「なっ…言うね。言っとくけど、簡単にはいかないよ」 渉「壁が高いほど燃えるタイプなんです」 遼「わかったよ、で…なんだっけ?名前」 渉「………………」 悪かったな。興味ないって言っただろ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加