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スフィアの腰に残った方の腕を回す。
そのまま自分に引き寄せると、強引に唇を重ねた。
「……っ!?」
スフィアは両目を見開く。
デュランの力に対抗する事が出来ないのだ。
「俺の唇の味はどうだ?」
デュランは囁くように言うと、そのままスフィアを押し倒した。
「ヴァンパイアの掟は知らぬとは言わせないぞ」
伯爵の位を持つ者の命令に拒否権は無い。
それは、ヴァンパイアの種を絶やさない為の処置と伝えられている。
本来、伯爵はヴァンパイアの危機に対してのみ、その権限を発するのだ。
だが、このデュランは違った。
私利私欲の為に伯爵の権限を使い、やりたい放題だった。
「貴様の権限など何の価値がある?」
スフィアはデュランを押し返そうと、全身に力を込めた。
口からは牙を出し、指の爪が伸びて来る。
両目が赤く光り出すと、スフィアは一気にデュランをはねのけた。
ズサーッと、床を滑る音がする。
その時、背中を強打したのか、デュランはゴホゴホと咳き込んでいた。
「それがお前の答えか」
デュランは立ち上がると、スフィアと同じように牙を出した。
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