第一章

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-- ギラギラと照りつける太陽。 気温が上がり、今が夏なのだと知らしめられる。 ヴァンパイアに太陽光は関係ない。 いや、正確には太陽の下に出る事が出来ないのだ。 太陽光に当たると、ヴァンパイアの肌は灼けただれ、すぐに灰になってしまう。 「そろそろ巡回の時間になるな」 カーテンを閉め切った部屋の中で、スフィアとロジェは向き合っていた。 「私の部屋の扉を開ければ、たちまち灰になるな」 可哀相にと付け加えたスフィアは、特に表情を変える事はない。 ただ、壁に掛けられている時計だけを見つめていた。 巡回とは、伯爵配下のヴァンパイアが、以上が無いかと各部屋を見て回る事だ。 何かの間違いでカーテンが開いてしまう事もあるかもしれない。 そんな時、廊下側からカーテンのスイッチを押して太陽光を遮断するのだ。 「あの部屋はスイッチが破壊されている。間違い無く即死するでしょうね」 ロジェの言葉に頷くスフィアは「時間だ」と告げた。 巡回が始まれば、嫌でも仲間に見つかってしまう。 そうなれば夜まで隠れ、屋敷から脱出しなければならない。 「覚悟は出来てるわね?」 ロジェの言葉にスフィアはコクリと頷いた。
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