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暗闇の路地で、何人かの人影が動いていた。
息を切らし、何か焦っているように見える。
「来るぞ!」
男が叫んだ。
その叫び声には焦りが感じられる。
手には銃を持ち、息を殺して気配を消した。
「そんな事では我らから逃げる事は出来ない」
耳元で囁く女の声。
その声を聞いた時、男は両目を見開いて驚いた。
「なぜ……」
それが最後の言葉だった。
女の持つ剣が、男の胸を貫いていたのだ。
背中から飛び出た剣先には、真っ赤な血がこびり付いている。
その血がポタポタと地面を赤く染めていた。
「ヴァンピールが我らヴァンパイアに勝てると思っているのか」
女は甘く囁くように言うと、一気に剣を引き抜いた。
男はそのまま地面へと倒れて行く。
「始末したか?」
「えぇ、終わったわ」
仲間の1人が女に近付くと、倒れた男を足蹴りする。
「実に退屈な狩りだったな」
「そうね……。でも、これ以上の血が流れるのは見たくないわ」
女は男を見る事もせず、その場から去って行った。
「お前もヴァンパイアの戦士ならば、何時までも情に流されるなよ」
男は女の後ろ姿を目で追いながらそう呟いていた。
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