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「待ちかねたぞ」
男は門に設置してある監視カメラの映像を見て口を開いた。
そこには街路樹からの光を反射させ、銀色に輝く髪の女が映っていた。
「見えているのだろう?門を開けろ」
スフィアはカメラに視線を向けると、そう言って睨み付ける。
「相変わらず口の悪い女だな。まぁいい。門を開けろ」
そう部下に命令する男は、画面に映るスフィアから視線を外す事はしない。
「間もなく俺の女になる……。外に出られなくなる程に辱めをくれてやるぞ」
怪しげな笑みを口元に浮かべ、男はそう呟いていた。
「スフィア様をお連れしますか?」
部下の1人が男に直立しながらそう言った。
「いや、俺が行く」
男は片手を上げて制すると、部屋から出て行った。
残された部下達は、男の姿が見えなくなった後、お互いの顔を見合った。
中には安堵したかのような表情をする者。
スフィアを哀れむような顔をする者様々で、ただ声を出す者は居ない。
男は現ヴァンパイアの長であり、伯爵の称号を持つ絶対的な存在なのだ。
そんな男に遺を唱える者は居なかった。
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