第一章

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「私を呼んだそうだな」 男の姿を見つけたスフィアは、顔色を変える事なく近付いて行く。 「お前の顔を見たくなってな。部下を送ったわけだ」 「私はお前の顔など見たくもない」 話しは終わったと、スフィアは男の横を通り抜けようとした。 その僅かな2人のやり取りを見ていた者達は、焦りにも似た表情をしていた。 それも当然である。 男は、このヴァンパイアを治める伯爵なのだ。 その伯爵に対し礼儀の無い態度で接すれば、慈悲のかけらも無いこの男は、間違い無く命を奪う。 そして、その場に居合わせた者達は、スフィアは殺されると思った。 「流石はスフィアだ。俺の女になるに相応しい」 男はそう言って豪快に笑う。 「誰がお前の女になると言った?」 スフィアの気配が殺気をまといだす。 「ふんっ、お前は俺の女になる。これは伯爵命令だ」 「伯爵命令か……実にくだらない」 「その口の聞き方は少し過ぎるぞ?」 2人はお互いを睨み合い、火花を散らし始める。 そして、スフィアは腰にあるホルダーに手を当てた。 「その銃で俺を撃つか?」 男は両手を広げながらスフィアを威嚇した。
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