13人が本棚に入れています
本棚に追加
「私を呼んだそうだな」
男の姿を見つけたスフィアは、顔色を変える事なく近付いて行く。
「お前の顔を見たくなってな。部下を送ったわけだ」
「私はお前の顔など見たくもない」
話しは終わったと、スフィアは男の横を通り抜けようとした。
その僅かな2人のやり取りを見ていた者達は、焦りにも似た表情をしていた。
それも当然である。
男は、このヴァンパイアを治める伯爵なのだ。
その伯爵に対し礼儀の無い態度で接すれば、慈悲のかけらも無いこの男は、間違い無く命を奪う。
そして、その場に居合わせた者達は、スフィアは殺されると思った。
「流石はスフィアだ。俺の女になるに相応しい」
男はそう言って豪快に笑う。
「誰がお前の女になると言った?」
スフィアの気配が殺気をまといだす。
「ふんっ、お前は俺の女になる。これは伯爵命令だ」
「伯爵命令か……実にくだらない」
「その口の聞き方は少し過ぎるぞ?」
2人はお互いを睨み合い、火花を散らし始める。
そして、スフィアは腰にあるホルダーに手を当てた。
「その銃で俺を撃つか?」
男は両手を広げながらスフィアを威嚇した。
最初のコメントを投稿しよう!