一◆来襲

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「お前はなんだ」 「え?」 「五代目が奮って戦っているときに、お前は陰で見物かよ」 「ち、ちがっ、俺は……!」 魁の言葉に、猪助は瞳を揺るがせながら声を張った。 だが、魁の目には冷めた色が浮んでいた。 蔑むような視線が、猪助の胸を突き刺す。 「か、魁……俺は」 「そうだよな」 「え?」 「お前が五代目近臣になってからこの一年、巡視には出たが敵襲なんてなかったもんな」 一年。 長いようであっという間のその日々は、平穏であった。 忍里の外に出ることはあった。それは、風魔小太郎が仕える北条家に呼ばれてのことだ。 ここ足柄山を抜け小田原城まで──そう今宵のように主の供をした。 しかし敵襲どころか、山賊にさえ出くわすことはなかった。 故に、こうして戦闘の場に出くわすのはだいぶ久方ぶりのことである。
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