一◆来襲

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俯く猪助に目を細め、魁は尚も言葉をぶつける。 「その背にある刀は何の為にあるんだ? 主を護るためじゃねぇのか、自分に危機が迫らねぇと抜けねぇ刀なのかよ」 「違うっ」 「認めねえ……俺はお前が五代目近臣だなんて認めねえからな。四代目の時と同じことしやがったら、俺はお前を抹殺する」 「そっ、そんなことっ」 「そんなこと許されねぇとかありえないなんて思うんじゃねぇぞ。俺は元々お前が嫌いなんだよ」 「……っ」 躊躇いもなく吐き捨てられた言葉。 それは崖から突き落とされたような衝撃だった。 行くぞと呟き歩き出した背に、猪助は絶望にも似た悲痛な思いを喉の奥にしまい込んだ。 固く口を結んで頷いて、少しの距離を置きながら後に続く。 口を開けば叫んでしまいそうで。 叫んでしまえば泣いてしまいそうで。 泣いてしまえば情けなさに押し潰されそうで。 猪助は唇を噛み締め、きりきりと痛む胸を掴みながら、物言わぬ静かな背を追った。 辺りは閑散としていた。 どんよりとした重い雲。 鬱蒼と広がる林。 蒼白く浮かび上がる雪。 そして── 身を潜める、白い存在。 木の枝から白狐の顔が、静かに立ち去る二人に視線を送っていた。 誰にも気付かれずに、ひっそりと──
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