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二本の大杉に張られた標縄をくぐると、そこは黒と白の相対する世界に包まれていた。
夜空を覆う厚い雲が生み出す闇と、大地を、木々を、家屋を一色に覆う雪との。
足柄山の奥深くにあるここが、風魔小太郎率いる忍衆の暮らす里だ。
風魔一党は隠語としての役割も含め、里を〝隠臥〟と呼ぶ。
この里で生まれ忍として育ち、この里で夫婦を結び、終焉の時まで忍として生きる。
そんな宿命を持った者たちが暮らしてきた忍里。
長が五代目となった今では数は減り、およそ七十人の忍が暮らしている。
「おかえりなさいませ」
「ご無事で」
二本の大杉に就く見張番に声をかけられながら、小太郎は里を貫く大通りを進んだ。
大杉二本の入口、南東から北西へと貫くような大通り。
両脇には寝静まった屋敷がつらつらと佇んでいた。
中には空家さえある。それだけ、里の人口は減っていた。
大通りを進んだ先には、立派な門がある。
太くてがっしりとした一本杉の鏡柱に、これまた幹を丸々使われた冠木。屋根は太い角材の軒に、板葺き。
それらは全て焼杉が使われ、美しい黒の木目を表情に出したその門は、厳かな雰囲気をかもし出していた。
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