二◆心々

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門を抜けると緩やかな登り坂。 左右には雪一色の斜面が上方に向かってある。 斜面の先には板塀に囲まれた家屋がそれぞれ二軒。 そして坂を登った先に、小さな門扉を入口にした屋敷が里を見下ろすように存在していた。 代々の風魔小太郎の生家であり、五代目である彼の住居でもある。 雪を被った屋敷は、やはり静かであった。 数年前、小太郎がまだ少年であった頃は、三代目風魔小太郎がいて、そして彼の父もいた。 屋敷内は忍の住まいとは思えぬ程、それは賑わいのあるものだった。 ところが今ではどうだろう、彼が玄関へ入ったところで出迎える者はおらず、室内は静寂に満ちていた。 唯一、家僕の者か誰かが灯しておいてくれたのだろう燭火が、ゆらゆらと暗闇を照らしている。 小太郎は無言のまま灯りに誘われるように中へ進む。母屋から伸びる渡り廊下を歩き、そして着いた離れ家の居室。 戸を開けると襖で仕切られた六畳の畳部屋。 中心には小さな囲炉裏。 主のいなかった部屋は、ぴしと肌を刺すような冷気に包まれていた。 だが小太郎は、燭火を灯すことなく、暗がりに溶け込むように、ただ静かに佇んだ。
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