序◆決志

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 だが、背後から向けられる視線は冷たい。  それを知っていての優しさなのか。  主なりの気遣い、というものなのか。  嬉しいはずなのに、少年は素直に受け止められず、逃げるように視線を逸らした。心に浮かぶのは皮肉めいた疑念ばかりで、顔にすら出ているのではないかと思ってしまう。 『二曲輪猪助(にのくるわいすけ)、お前を我──五代目風魔小太郎の近臣に任ずる』  そう言って左腕に捺された〝(あかし)〟。  事実上、少年は既に五代目小太郎の近臣だ。夢が叶っているのだ。  それなのに、心は泣く、渦を巻く。  返す言葉も見つけられず、沈黙が流れる。  だが、静かな声がそれを破った。 「猪助」 「……はい」 「四代目からお前の働きぶりはよく聞いていた」 「そんなこと、世辞の一つです。実際……俺のせいで四代──」 「だが四代目の遺志は我に関係ない」  遮る言葉に思わず顔を上げた。
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