小説のような恋

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過去の俺にはファンと呼べる者がいた。 中学時代の一つ下の後輩。 俺は授業の合間のノートの後ろの方を利用して小説を書いていた。 語録の少ない中学時代、それでも俺は文章を書くのが好きで。 今よりもずっと下手な文章だったが自分の物語を書いていた。 書いていた内容は恋愛小説。 あの頃の俺は、今思うと馬鹿馬鹿しいがスイーツ(笑)な小説を書いていた。 完結を間近に控えた頃、俺は教室移動の際に廊下にそのノートを落としてしまったらしい。 それに気付いたのは放課後になってから。 一限の前に落としたノートが見つかるわけも無く、放課後の時間を図書室で過ごしていた。 まだ、ノートを落としただけなら良い。だがあの内容を友人に知られたら死ねる。 半ばあきらめながら本を眺めていると、不意に一つ下の後輩に声を掛けられた。 「相坂先輩ですよね?」 部活も委員会も接点の無い女子生徒。 そんな女子だったが、俺は彼女の名前を覚えていた。 「棗さんだよね?どうかしたの?」 図書室を良く利用する女子生徒。 それだけで、図書委員でもない俺は彼女の名前を覚えていた。
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