猫・上

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「ふん、ちゃんと綺麗に出来てるじゃない」 開口一番、俺の部屋に入るなりぐるっと一周して見てまわった少女は真っ先に口にする。 「まーな、伊達に一人暮らししてるわけじゃないし」 …言えない 「とりあえずお茶持ってくるから適当に座って待ってな」 「はーい、ダージリンお願いねー」 ……言えない 「…よく家にダージリンがあるってわかったな」 「………勘よ」 ………言えない、家に遊びに来るチー(猫、♀)が俺の部屋が汚くなってくると爪で引っ掻いてくるから掃除するのが癖になってしまっただなんて… っと、心の中でため息ついてると戸棚から紅白饅頭を発見。 紅茶に饅頭ってのはアレだけど…まあいいか、無いよりマシだ。 「おーい、ダージリン持って来たぞー」 「ッ!?…あ、ありがとう」 少女のテーブルの前に紅茶が入ったカップと紅白饅頭の白の方をそっと置く。 俺の分はその反対側に置いてから腰をおろす。 つまり今はテーブルを挟んで向き合って座っているのだ。
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