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今日の天気は雨。
それでも彼らが外出しているのは冷蔵庫の中身が空になりつつあるからで、今日買い物に行かないと夕飯すら危ういのだ。
そんな理由から買い物を済ませ、傘を差したエミルと両手に買い物袋を提げたラタトスクが並んで歩いていた。
ラタトスク
「………………あ。」
ふと、ラタトスクが足を止める。
エミル
「わっ…いきなり止まってどうしたの?………あ。」
ラタトスクが傘からはみ出した所でそれに気付き、エミルは慌てて引き返してラタトスクを傘の中に入れる。そして彼の目線を追った先に、彼が見ているであろうものを発見した。
エミル
「この子……捨て猫かな?びしょ濡れだね…」
ラタトスク
「……………。」
くたびれた段ボールの中で、雨に濡れながら小さな声でミィミィ鳴いている子猫。それを、エミルはそっと手で撫で、ラタトスクはしゃがんでじっと見つめていた。
子猫はエミルに撫でられて気持ち良さそうにしていたが、ふと顔を上げてはラタトスクをじっと見つめ返す。ラタトスクも(両手が買い物袋で塞がっているせいもあって)撫でたりしようとはせずに黙って見ていた。
ラタトスク
「……………………よし。」
突然一人頷いたかと思うと、ラタトスクは買い物袋を二つ共右手に持ち、空いた左手で子猫を抱き上げた。
エミル
「よし、って……もしかして、連れて帰るの?」
ラタトスク
「この状況を見て、それ以外に思い付くか?」
エミル
「うーん……思い付かない。」
驚いたエミルはまた雨に当たってしまったラタトスクを傘に入れて問い掛けるも、その表情は何処か嬉しそうなものだった。一方の子猫も、ラタトスクの腕の中で嬉しそうに鳴いていた。
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