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リヒター
「駄目だ。」
ラタトスク
「テメェに聞いてねぇし、つーかまた勝手に人の家に入りやがって…!」
子猫を連れて帰ってきた二人に立ちはだかったのはリヒターだ。居間から玄関に顔を出して子猫を見つけるなり廊下で仁王立ち。そしてラタトスクと睨み合う現在に至る。
エミル
「り、リヒターさん…ラタトスクも濡れちゃったので、取り敢えず中に……」
リヒター
「そのついでに猫も入れる気だろう?」
エミルも頑張ってみるが、リヒターにはなかなか通用しない。その間にも子猫はラタトスクに抱かれてにゃあにゃあ鳴いている。
アステル
「ただいまー…って、何してるの?こんな所で。」
そうこうしている内にアステルが帰ってきた。玄関でエミル達とリヒターが言い争っていたので、何事かと首を傾げる。
エミル
「あ、兄さん。実は………」
アステルの帰宅に気付いた二人が振り向くと、アステルも子猫に気付いてあっ、と声を上げた。
ラタトスク
「……捨て猫だ。」
エミル
「そうなんだよ…この雨の中、道端に捨てられてて……」
エミルとラタトスク、そして子猫が「お願い」とでも言うようにアステルをじっと見つめる。
暫く考えるように黙っていたアステルが、溜め息をつきながら口を開く。
アステル
「だーめ。………………って言っても、きっとこっそり飼うんでしょ?」
仕方ないなぁと笑いながらアステルは子猫の頭を撫でる。
ラタトスク
「じゃあ……!」
アステル
「うん、いいよ。でも…ちゃんとお世話してよね?」
エミル
「……!ありがとう兄さん!!よかったね、ラタトスク!」
この家で一番権限があるアステルからの許可が降り、二人はぱっと表情を明らめた。それからエミルの言葉に「うるせぇ!」と照れながらラタトスクは部屋の中へ駆け足で進んでいく。エミルもその後に付いて行き、玄関ではアステルとリヒターがその様子を見ていた。
リヒター
「………本当にいいのか?」
アステル
「いいの。ラタトスクがあーいうの放っておけないって知ってるし。それに……リヒターにどうこう言われる筋合いは無いと思うんだけど?」
寧ろ逆だよね、と言いながら向けられたアステルの黒い笑顔に、リヒターはただただ恐縮していたという。
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