降りしきる雨の中で

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ラタトスク 「………………」 アステル 「………………はぁ……」 エミル 「…兄さん…元気出してよ。」 二人掛けのソファの端に三角座りをしてうなだれているアステルを、エミルが隣に座って慰める。そしてそれを一人掛けソファに胡坐をかいて、ラタトスクは呆れるように溜め息をついた。その膝の上ではチビがくつろいでいる。 アステル 「…どうしてラタトスクには、あんなに懐くんだろ……」 エミル 「さ、さぁ……?」 先ほどからチビはラタトスクにばかり懐いていて、アステルには殆ど近寄ってくれないのだ。 ラタトスク 「………チビ、兄貴ん所にも行ってやれよ。ウザくて仕方ねぇ。」 ラタトスクが膝を揺すってチビに言ってみるものの、チビは全く動こうとしない。 エミル 「う~ん……こういう時は、やっぱり餌付けかな?兄さん、やってみなよ。」 エミルは戸棚からにぼしの袋を取り出すと、アステルに一つ差し出した。それを受け取って暫く眺め、アステルはチビに向けてチロチロ動かしてみる。 すると、動きに反応したらしいチビがアステル、もといにぼしをじっと見つめ始めた。 アステル 「…ほ~ら、おいしいにぼしだよ~?」 チビの反応があった事で望みが見えたのか、アステルは身を乗り出してチビを誘う。そのおかげか、やっとチビがラタトスクの膝から降りてアステルの方へと少しずつ近寄って行った。 アステル 「よし…もう少しだ…!」 エミル 「頑張って、兄さん!」 全く同じ顔の二人が必死になって子猫を誘う姿は、端から見るとなんだか不思議な画だな、と思いながらラタトスクはその様子を見守っていた。 そしてついに、チビがにぼしに噛み付いた。 アステル 「……やった!!よ~しよし、いい子だ…あ……」 エミル 「…………あ~あ……」 が、チビはにぼしをくわえてそのままラタトスクの膝まで戻って行ってしまったのだ。それにショックを受けたアステルは、先ほどよりも落ち込んだ。エミルも心なしかしょんぼりしている。
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