三の刻、雨の中の来訪者

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それもその筈、此処には時計塔以外の建物が無いし、他に見る物も無い。 森で何が採れる訳でも無ければ、熊が出るわ鬱蒼として不気味だわで、森を抜けようと思う者も居なかった。 好奇心を持った小さな子供でさえ、只の一度も見た事が無い。 まぁ…居たら匿って、街に連絡しなければいけないのだが。 その時計塔を見上げた場違いな訪問者は…制服を着た若い女学生だった。 黒の短髪が雨風に揺れ、眼鏡が表情を隠している。 この地域の天候は荒く、曇りがちだ。 この雨風は嵐の前兆と見て間違いないだろう。 女学生は塔の上を見上げ、暫くすると辺りを見回し始めた。 「怪しい人だったらどうしよう…壊されちゃったりして…」 ジェラードは人形として、壊される事を恐れている。 「だ、大丈夫よね…?」 そう呟くと、螺旋階段を軽い足取りで降りて行った。
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