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それもその筈、此処には時計塔以外の建物が無いし、他に見る物も無い。
森で何が採れる訳でも無ければ、熊が出るわ鬱蒼として不気味だわで、森を抜けようと思う者も居なかった。
好奇心を持った小さな子供でさえ、只の一度も見た事が無い。
まぁ…居たら匿って、街に連絡しなければいけないのだが。
その時計塔を見上げた場違いな訪問者は…制服を着た若い女学生だった。
黒の短髪が雨風に揺れ、眼鏡が表情を隠している。
この地域の天候は荒く、曇りがちだ。
この雨風は嵐の前兆と見て間違いないだろう。
女学生は塔の上を見上げ、暫くすると辺りを見回し始めた。
「怪しい人だったらどうしよう…壊されちゃったりして…」
ジェラードは人形として、壊される事を恐れている。
「だ、大丈夫よね…?」
そう呟くと、螺旋階段を軽い足取りで降りて行った。
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