第一章 目覚め、始まり

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それから2週間程、病院生活が続いた。 特筆した出来事も無く、ただ外の景色を眺めるだけの日々。 体調は問題なく至って健康体だ。 いや、そもそも目覚めた時から身体には何も異常はなかった。 どれくらいの事故かは分からないが、両親は死んで僕だけ無傷で生きていたのはおかしくないか? 最近はこのことばかり考えていたが、相変わらず事故当時のことは思い出せず、疑問に答えることは出来ずにいた。 見舞いに来る人もいないし、時折病室を見回る看護士も詳しいことは分からないと済まなそうな返答がくる。 だから、再び自分で思考に耽るのだが、しばらくすると決まって頭痛がした。 まるでこれ以上思い出すなと警鐘を鳴らすように。 あの事故以来、僕の時間はずっと止まったままだ。
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