第一章 目覚め、始まり

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「すまない、君の悲しみの方が大きいのに…」 そう言いながらポケットから出したハンカチで目頭を拭う。 いや、僕はーーー 「くっ…」 口を開こうとすると再び頭痛が来る。 だが今回は一瞬の痛みだった。 「無理に思い出そうとしなくていい。辛いだけだから」 違う。 その時の事だけではなく、両親がどんな顔をしていたかさえも思い出せない。 知らないのに、悲しいという気持ちが生まれてくるはずもなかったのだ。 「あの、一つ聞いてもいいですか?」 「なんだい?」 失った記憶は時間に任せるしかないだろう。 ならばこれからの事を聞かなければ。 「僕はこれからどうすればいいんですか?」 両親を失った今、一人で暮らしていくことを考えなければならない。 通っていた学校は退学しないとダメだし、生活のために働かなければいけない。 「それは心配には及ばないよ」 だが僕の不安な声を払うかのように優しい声で返答がきた。
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