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俺は食事には一切時間をかけない。
せいぜい、10分程。
俺が食べ終わった頃、細雪は小さな唇でスープを少しずつ飲んでいた。
スープを飲み干して一息、安心したような吐息を漏らす。
だが心なしか、その表情はとても暗かった。
やがて、小さな手で、自身の胸を押さえはじめた。
暗い表情は、やがて苦悶の表情に変わっていった。
ひゅう、ひゅう、と普通の息とは明らかに違う音が、細雪の唇から漏れる。
細雪はベッドに潜り込み、体を震わせ、うずくまるような姿勢になる。
辛そうな息の音が聞こえる。
ああ、耳障り。
って、普通の俺なら思うハズなんだけどな。
「おい、大丈夫かよ」
大丈夫。
なんて馬鹿らしい台詞。
なのに、俺はその言葉を発せずにはいられなかったんだ。
細雪の事が……気になったから。
「はぁ……っ…」
今度は腹を押さえる。
苦悶の表情はどんどんと苦しいものになっていく。
駄目だ。
俺には。
俺には――――……
見過ごすなんて、出来ない。
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