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次に細雪と会話をしたのは深夜の事だ。
睡眠をとっていた俺を起こしたのは、目覚まし時計でも日光でもなく、細雪の悲鳴にも似た絶叫だった。
大方想像はつく。
虐待されている夢を見ていたのだろう。
いや、正確に言うと過去を思い出したと言うべきか。
カーテンを開き、隣のベッドを見る。
そこには涙でびしょびしょになった顔をしていた細雪が、力を失ったかのようにぺたんと座っていた。
息もだいぶ辛そうで、あまりの大泣きのせいか、息がつまっている。
そして、一、二回大きな咳をした直後、細雪は白いスーツに夕飯を胃液と一緒に吐き出した。
「大丈夫か!?」
「げほっ!!げほ!!……っはあ……はあ………」
大分辛そうだ。
顔が紅い。
熱もありそうだ。
俺は細雪のベッドのシーツを取り外し、床に置いた後、冷水機から水を紙コップに注ぎ、細雪に渡した。
細雪は小さな、震える両手で紙コップを受け取り、静かに口に含む。
小さな紙コップも、細雪が持つとやけに大きく見える。
「………大丈夫です……ありがとうございます………嫌な夢を見ていたようです……はあっ」
また細雪の大きな瞳から、涙がこぼれた。
「また今度教えてくれよ。今日は寝るんだ」
細雪の体ががたがた震えていたので、暖房の温度を少々上げて、家から持ってきたグレーの上着を細雪に着せてやった。
上着は細雪には大きすぎて、ぶかぶかだったが、細雪は気にいってくれたようで、微笑んだ。
「ありがとうございます……本当に、本当に……。」
「礼はいいよ。さっさと寝るんだ」
俺は、おかしいよな。
何なんだ?
骨折をすると、人は性格が変わる仕組みなのか?
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