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「先日姫様に人間界で危ないところを
間一髪で助けていただきまして、
その後少し離れの湖で釣られまして、
そして何も聞かされることもないまま
ここまで連れてこられました。
初めまして一ノ瀬雅人と言います。」
その挨拶に王室にいた者は
王妃を除き驚きと絶句、
王妃はずっとニコニコしている。
皆はいったいどこに驚いているのか。
1、雅人が人間だから
2、雅人が泉で釣られたから
3、実は重大な掟破りだった
まぁ正解がどれにしたって
雅人が一番驚いてるのには違いない。
「悪魔に襲われたのか。」
王様に聞かれ雅人が頷いて答えると、
皆の表情が曇り出し兵士達は一礼し
部屋を飛び出してしまった。
「悪魔……って言うか死神ですよ。
家にいたはずなのに、気づいたら
外にいて、死神みたいな姿で、
鎌を振り上げ、飛んでいるように
追いかけてきて……そこを優希さんが
通りかかって助けて貰いました。」
「それは難儀でありました。
追跡調査をしていて正解でしたわ。」
笑って安心させるかのように
頭を撫でてくれる王妃の優しさに
母が重なり、泣きそうになった。
「しかし、気づけば外にいたと
言うのが気になるな。」
「えぇ、でも、もしかしたらこの者には
此方の才能があるやもしれません……。」
「人手が増えるのは嬉しいが、
人間が増えると足手まといも出る。」
「そう言いなさんな、全ての人の子は我々の子ではありませんか。」
我々の子?
だからこんなにも落ち着くのか?
いや、でもここは夢……
増え続ける問題。
否定することを止め思いきって
雅人は王妃に訪ねた。
「それってどう言う意味ですか?」
「この町の名はエデンの園。
我々の名はアダムとエバ。
神より生まれし、人類最初の者…」
「神を裏切ったアダム…!?」
「私が神を裏切った?
それはどう言うことです?」
雅人は自分が知っていることを
簡潔に話した。
「アダムは神から食べてはいけないと
言われていた赤い身を食べ、人の心に
闇が生まれたと言われている。
それは悪魔に唆されたと言われていて、
人に弱い心と疑う事をもたらした。」
「……それは事実だ。」
王は小さく頷いた。
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