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「でも!!」
雅人が顔を上げ、紡げもしない言葉を
口にした時には
「無理しなくていいよ。
君が望まなきゃ此方に来ることもない、
人間は人間として…その方がいい。」
自分の目に飛び込んできた悲しそうに
笑う天使の姿に雅人自身もまた、
どうしようもない悲しいさに襲われた。
「優希!!!」
いきなり雅人の頭の中で知らない誰かの
声が響き渡り、思わず耳を押さえた。
「やばい!!忘れてた!!」
「忘れてた?」
「優希!!そこにいるんだろ!!」
又聞こえてくる声に、焦る天使。
「どうしよう…、えっと…あぁ!!
君にお願いがあるんだけど。」
「なんでしょう?」
「銀の毛並みの狼を想像して!!」
「へっ?」
「お願い、想像して招いてあげて、
どうぞいらしてくださいって。」
何やら必死にお願いされると
聞かずにはいられなくて…、
「分かりました。」
雅人は天使に言われるがまま、
しぶしぶ目を閉じて見たこともない
狼を自分なりに想像してみた。
銀色の毛並みに蒼い瞳。
不思議と頭の中にはそれなりの形が
姿を表し、色付き、鮮明になる姿。
狼なのに何故か耳に十字架のピアスを
している。
こんな狼いないだろうと思いつつ
目を閉じたまま雅人は彼を招いた。
「どうぞ...いらしてください...」
ガシャン
雅人が言葉を発した瞬間、目の前が
銃で撃たれたようにガラスの壁が割れ
雅人に狼が襲いかかる。
「わぁ!!!!!!」
瞬時に目を開けると天使の足下には
先程の狼が何食わぬ顔で座っていた。
「お、狼さんがいらしてますけど…?」
雅人は指差して恐る恐る聞いてみると狼に思いっきり指を噛まれてしまった。
「いってぇ―――――!!!」
大声を出し飛び上がる。
血は出ていないようだが、
かなりの痛みが脳を刺激した。
当の噛んだ本人は蒼い淡い光りを放ち
その姿を人型へと変えた。
白い翼を持ちピアスをした銀髪の男性。
髪の色を金変えればsecretのギタリスト
佐々木龍平さんと面影がタブる。
「人を指さすとは無礼な。」
゛いや、いや、
今まであんたは狼さんでしたよ?゛
なんてつっこみたい気持ちは抑え、
雅人は改めて2人をまじまじと見つめ、
自分の現実論と格闘を始めた。
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