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「そいつは、女のくせに本気で甲子園へ行けるって
信じてる、かわいそうなヤツなんだからさ」
――助けてくれるものと思った少年の冷たい台詞に、彼女ははじめて反論の言葉を口にした。
「――どういう…… 意味……?」
「言葉通りの意味だよ」
少年は喉許に棘を隠し、鼻で笑った。
「女は甲子園には行けねぇって、憐れなおまえに
教えてやってんだ」
「……うそだっ!」
脳天に雷が落ちたような鋭く重い衝撃が、彼女の全身を駆け巡る。
「うそだっ!」
何度も叫びながら、彼女は少年の胸ぐらにつかみかかった。
「はなせよっ」
ふたりを取り囲んでいた少年たちが、折れそうに華奢な彼女の躰を長身の少年から引き離す。
少年たちに抑圧され、もがく彼女に、長身の少年は再び云い放った。
「女は、甲子園には行けねぇんだよ」
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