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佳奈が指差す先には陽亮の姿があった。
「陽亮君、帰らなかったの?」
「帰った…。けど戻ってきちゃった」
陽亮はポツリと呟いた。
「澪ちゃんに、謝りたくて。」
「え?」
澪は陽亮に見つめられると思わず視線を逸らした。
陽亮は、スタスタと澪に近寄ると何も言わず深く頭を下げた。
「ごめんなさい!」
「やっ…ちょっとやめてよ。」
澪は誰かに見られてないかと余計な心配をしながら陽亮に言った。
陽亮は頭を上げようとはしない。
「頭上げてよ。私が虐めてるみたいじゃん!」
「俺無神経でさ、たまにこうやって地雷踏んじゃうんだよね…。でもさ、やっぱりそのままは嫌だし、せっかく澪ちゃんとも知り合えたんだし本当に仲良くなりたいんだよ」
頭の裏側を澪に向けたまま陽亮は言う。
澪が戸惑っていると耳元で佳奈が囁く。
「澪ちゃん、どうするの?」
「え?!いや…どうするって言われても…っとにかく顔上げてくれないかな?」
「澪ちゃんが仲良くしてくれるなら上げる。」
「はぁ!?」
陽亮は依然下げたままだ。佳奈はプッと軽く吹き出すと笑いをこらえた。澪は口をぽかんと開けて止まったが、意味を理解し言葉を返す。
「あんたソレ…軽く脅しじゃないの?謝りに来たんでしょ?」
「謝りに来て尚且つ、澪ちゃんと友達になる事を許可してもらいたいから。」
単純な澪は、少しムッとして「じゃあずっとそうしてなさい!」と言うと教室を出た。
それを見ていた佳奈は陽亮に「ドンマイ」と笑いかけて澪を追いかける。陽亮は、しばらくそこにそうしていた。
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