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一瞬、教室が静まり返った。
そりゃそうだろう。
昨日の始業式以降、寝てる姿しか見ていない
彼女が発言したのだから。
「ぁ…ありがとう、武蔵野(むさしの)さん!」
司会の子もビビっている。
あぁ、あいつ、武蔵野っつーのか。
「なあなあ衛!!
あの武蔵野って奴…綺麗じゃね?」
後ろの亮祐がコソッと耳打ちしてくる。
「ん…?…あぁ、かもね」
確かに綺麗だと思った。
大学生と言われても違和感のない
凛とした大人の雰囲気を纏っていて、
ストンと肩の下まで伸びた、ストレートヘア。
ふぅん。こんな奴もいたんだな。
寝てばっかだけど。
「俺、狙っちゃおっかなー」
「ん、え?」
「あのっ…草野くん?
アドレス、交換しない??」
亮祐の言葉にポカンとしてしまった俺は
クラスの女子数名から声を掛けられて我に帰った。
どうやらいつの間にか休み時間になったらしい。
「あ…ああ、いいけど?」
名前も顔も一致しない何人かとアドレス交換をする。
きゃーだとかやったーだとか言って
女子の波は去った。
高校に入ってからは結構こんなことがある。
…ん、あれ?
これが俗にいう高校デビューってやつか?
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