笑い方を忘れた催眠術師

１章

「ひとの目をみて話す事すらできないの？」

罵倒の声がする中、４人の誰のものでもない澄んだ声が槍のように聞こえてきた。

さ、佐倉さんの声……か？俺は誰の声なのか一瞬わからなかった。
「はぁ？」
「なにおまえ？？うざっー」
「てヵおまえの目なんかきもくて見れるわけがねーしっ！」
「ていうかあんた何様のつもり？　自分の状況わかってないわけ？？」女子たちの罵声はどんどんヒートアップしていく。
そしてついに、ドカっと鈍い音が微かにきこえ「ぅっ……」といううめき声？が聞こえた。

「佐倉さんっ！」俺は思わず思いを口にしていた。
見ているわけではないのだが壁一枚向こう側で佐倉さんがうずくまっているような気がしたーー
鈍い音は罵声とともにヒートアップしているようだった。

どうして自分は男なんだよ……俺はこぶしを強く握って壁一枚むこうで起こっていることを止めにいけない自分に腹が立っていた。