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「…………誰?」 「そっちこそ…何? 不法侵入?」 「はぁ?ここ俺の部屋だし…」 鍵を揺らして見せれば… 「部屋間違えてんじゃないの? 鍵開けたの俺だし…」 「…あ…そう言えば…」 空回りした鍵の感触を思い出し自分の鍵に付いてるタグと契約書を照らし合わせ 扉に記された部屋番号を確認する俺… 「間違ってないし…」 「荷物こちらでよろしいですか~?」 引っ越し業者の男たちに声を掛けられた… 次々とトラックから玄関の前に運び込まれる荷物… 「すみません! ちょっと、手違いがあったみたいで…」 携帯を取り出し不動産屋に確認すると 二重契約だと分かった… 代りの部屋も無いと言う 無責任な不動産屋の声に呆然としていると… 『ルームシェアされたらどうですか? 元々そちらの物件はご家族向けのモノでして…』 相変わらず無責任な不動産屋… 確かにひとりで暮らすには贅沢な部屋だけど… 「どうしよう…?」 「困るんですよねぇ…?」 痺れをきらした引っ越し業者が苛立った声で呟く… 今更荷物を戻すなんて事は無理そうだ… 何よりこの部屋を諦めるなんてあり得ないし… 「兎に角、一旦荷物はこちらに運ばせてもらいますから…」 事務的にどんどん運び込まれる荷物… 「そちらのミスじゃないですか?!」 怒りの矛先はただひとつ… 俺は携帯に向かって声を荒げた… 『まぁまぁ落ち着いて下さい… それでは、お家賃2割引ってことでいかがでしょう? おふたりでご相談お願いしますよ…』 「そんな…無茶な…」 『取り敢えず、キムさんに替わっていただけますか?』 キム…? あぁ…あいつ…? 「危ないですからどいてもらえます?」 「…す、すみません…」 運び込まれる荷物に揉まれるように 部屋に押し込まれる俺… 俺ってば…小心者だな…もっと強く言い返したいのに…情けない… 自分の不甲斐なさにドンヨリしてたら… 『もしもし、キムさんですか…もしもし…もしもし?』 携帯からバリバリと漏れる不動産屋の声… もう、ウンザリだよ… 「あの…キムさん…?」 他人事みたいな顔して部屋を片付けてる男の目の前に携帯を差し出した… .
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