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人が作り出した偶像の群。
空を突き刺す勢いで立ち並ぶビル、ビル。
それらが随分と遠くに見える。
まだ、海を挟んだ向こう側。
この海岸線をぐるりと回れば、いずれはその中に辿り着いてしまうだろう。
「このまま進んだら、どうなるんだろうか。」
まだまだ遠いビルの群は、何故か蜃気楼の様な感覚を与えた。
行き着く先は其処の筈なのに、何故かそうは思えない。
ただの錯覚だ。
言い聞かせた。理由もわからない歩に、今更ながら不安になったような感じ。
ただ、一つ
「…なんか、見つかりそうな気はするんだがなぁ。」
根拠などない、確信。
あまりにも曖昧な思考。
暫し、休を取っていた脚を、またゆっくり進め始めた。
キィン、と耳鳴り。
そして、静寂。
極彩を失った世界が、俺を迎えいれた。
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